知らないと損するここだけの話~あの人の笑顔~

 「まさか解決できるとは思いませんでした。本当にありがとうございました」と晴れ晴れした笑顔で、Aさんは何度も御礼を繰り返してくださった。
柔らかな表情の笑顔を見て、この笑顔に出会いたいために、弊社団を続けているのだと実感した。

 あれは、去年の夏だった。。
「親と私の住んでいる地域の関連行政にも、不動産業者にも、弁護士にも税理士にも相談に行きました。色んな相談会やセミナーにも出席しました。一年半ほど色々と行きましたが、どこも私の知りたい答えを教えてくれませんでした。ですから、失礼と思いますが、期待はしていませんが、相談にのってもらえますか?」とAさんから連絡がきた。
”期待はしていない”とはっきりと、ぶっきらぼうに言うAさんに驚いたし、相談疲れをされていらっしゃる印象を受けた。

 Aさんは親の遠距離介護をしていた。親御さんは足取りがおぼつかないために介護サービスを受けていたが、判断能力はしっかりされていた。

 Aさんが仕事で忙しいことを理解されていた親御さんは、Aさんと相談し、そう遠くない時期にAさんの近くの有料介護施設に入居したいと考えていた。

 Aさんの実家は一戸建てながら、手放すことにそれほどの未練もなかった。しかし、生前贈与か相続時に処分するのか、あるいはベストなタイミングがあるのか、本当に親を近くに呼びよせる必要があるのか、あるとしたら、それはいつなのか、の回答が見つからずにいたのだという、
 何をどこから手を付けるのかの答えを教えてくれる所もなかったという。

 弊社団では、Aさんにざっくりとヒアリングを行った上で、弁護士、税理士、不動産関係者、金融総合FPに集まってもらう必要性を感じた。介護や相続の相談は、円を描くように色んな専門家が包括的にアドバイスをしないと片手落ちになるからだ。最終的には司法書士も加わり、介護やメンタル関連の専門家も集まった。Aさんの親族関係は複雑で、何かと考慮しなければならない問題もあった。

 実は専門家たちの話し合いでは、対策はすぐに見つかったが、Aさんの親御さんは、介護や万が一の時にどう考えていらっしゃるのか、本当に判断能力があるのか、不動産売却や、施設転居の意志はあるのかを確認しないといけない。
 遠く離れた場所に住むAさんの親御さんに弁護士や司法書士なども同行して何度も面談も行った。

 親御さんの心配は、複雑な親族関係によるご自身が亡き後の親族間のトラブルと介護施設の費用だった。

 Aさんと親御さんの心理ケアもしながら、親族間のトラブルがないように、相続の事まで検討し、法律・税務サポート、金融シミュレーション、不動産売却、施設の移転、墓じまいなど、すべてのリスクを洗い出し、対策を講じた。
 

 話し合いの結果、Aさんの親御さんはAさんの自宅近くの施設に転居することとなったが、その費用は今の施設費用の倍額になるため、親御さんの自宅を売却して、施設入居費用にあてることとなった。転居時期も、今年の春に決まった。
 親族トラブルを避ける対策も法律面ではAさんがサポートする範囲や権限なども慎重に検討を行い、弁護士や税理士の継続的なAFTERフォローも行うようにした。入出金も弁護士や税理士がチェックして税理士が作成したオリジナルの書類も作成した。

 Aさんが相談にのってもらっていた専門家の名誉のために言えば、専門家が単独で相談にのるのは、答えが出ないのは当然だと思う。正直、親族間が複雑で難しい事が多々あったし、単純に不動産を売却すればいいだけの話ではなかったからだ。

 私たちはAさんの親御さんの体調を考慮しながら、遠方にいるAさんの親御さんに数回にわたる面談を重ねて、丁寧に進めていった。

 介護・相続問題は多くの人の人生に関わるため、慎重さが求められる。そのため、介護や相続問題は評論では成立しない。

Aさんは社会人としては立派な方だし、法律・税務・金融・不動産の基礎知識はあっても、実務となると、豊富な知識と実績がある専門家とは知識が乖離していることは否めなかった。

 ある専門家が言ったことは他の専門家が知らないことでも、やはり専門家同士だと、瞬時に全員が理解できる。しかし、いくら分かりやすく、専門用語を使わないで説明しても、一般の方が理解するのは、時間がかかる。
 

だが、Aさんは立派だった。乱暴な表現で失礼だが、何度も何度も何度も諦めずに、まさに食らいつくような感じで理解に努められた。私達もメモを取るAさんが注意点やポイントの書き忘れがないかも気を付けながら、区切りごとに要点や注意点の整理に努めた。

 改めて思うのは、専門家がタッグを組んで相談に臨んだからこそ、Aさんと親御さんに安心して、納得していただける答えが見いだせたということだった。

 各専門家でも自分の専門外のことは正確には答えることはできない。さらに介護関係のリスクや事情は士業には分からない。このため、弊社団でもそれぞれが英知を出し合い、Aさんと親御さんと伴走しながら、その場で質疑応答をすることを繰り返した。

 専門家が一同に介すると恐縮するように思うかもしれないが、先生方がすごく腰の低い先生であったことも奏功して、Aさんは「自分で介護や相続の専門家を一人一人捜し当てることはできない。第一、どんな専門家が必要なのかも分からない。その場で何でも聞け、時間とお金を大きく節約できた」と言っていただけた。

 介護問題は当初は、制度関連の質問だが、時間が経過するほど、親族間屋お金や相続問題が発生する。
このため、専門家がチームを組んで相談に当る必要があるが、まだ日本では、士業だけではなく、不動産関係・介護関係・メンタル面の専門家が一同に集まって、その場で質疑応答に答えて対策を考える事例はほとんどないと思う。

 しかし、長寿化や働き方改革が進むと、チームで相談に乗ってもらうことは今後主流にならざるを得ないと実感する。
実際、企業の人事などではその必要性を予測している企業も現れ出し、弊社団への相談も増えている。

 「解決できるとは思わなかった。でも、親も安心して新しい生活を始めることができます。私もこの一年半ほど手につかなかった趣味も復活しました。感謝の気持ちでいっぱいです」と、輝く笑顔で言ってくださった。

 初回は、どこか投げやりだったAさんは、今では親御さんの対策を終えたためか、非常に行動的で明るくなっていった。

 私たちも、Aさんの変化を通して学ぶべき事も多々あった。
「どこかに答えがあるはずだ」と諦めきれずに、相談先を探し続けたAさん。
何度も何度も質問を繰り返して、知識を身につけていったAさん。何より、親族の誰もが介護や相続で揉めない事を願ったAさんと親御さん。

その熱意に打たれ、私たちは一丸となって知恵を出し合い、サポートさせていただけたことは間違いない。
私たちもお客様に育てていただいているのだと思う。

 Aさんと春から始まる親御さんの新生活が実りあるものであることを願わずにいられない。