知らないと損する、ここだけの話~3億円事件の保険~

 その”歴史の証拠”は、厳重に管理された場所で、静かに時を重ねています。

 今からちょうど50年前の1968年(昭和43年)12月10日、東京都府中市で“三億円事件”が発生しました。
東芝府中工場(現:東芝府中事業所)に勤務する従業員に支給されるはずだったボーナス約三億円を積んだ現金輸送車が、ニセの白バイ警官に言葉巧みに誘導され、現金輸送車ごと強奪されたのです。後年、公訴・民事時効が成立した、犯罪史上に残る未解決事件です。

 この貨幣価値については、ウィキペディアによると、「被害金額3億円は現金強奪事件としては当時の最高金額であった。これは、平成26年(2014年)の貨幣価値に直すと、消費者物価指数で見れば約3.5倍の約10億円の価値に当たる。

また、大卒の初任給を手掛かりにするなら、当時は約3万600円ほどと言われており、2016年の初任給20万3800円と比較すれば約6.66倍となり、約20億円の価値にあたる。その他にも50 – 100億円の価値とする意見もある。いずれにせよ、その後の現金強奪事件では金額こそ本事件よりも強奪金額が多い事件があるが、貨幣価値においてはいまだ日本最高である。 」とされています。

 

 この事件に、大きな役割を果たしたのが、保険(損害保険)であることを、みなさんはご存知でしょうか?

盗まれた現金は、損害保険から補填され、従業員には無事、ボーナスが全額支給されているのです。

 「損害保険?」と不思議に思われるかもしれませんが、損害保険の中でも”運送保険”として保険が掛けられていました。
”運送保険”とは、ざっくりと説明しますと、日本国内で運送される貨物を対象に、運送中に偶然の事故で貨物が損害を受けた場合に支払われる保険です。
しかも3億円の現金は、運送保険上は”携行備品”として取り扱われています。

 ウィッキ先生が”現金強奪事件”では、いまだに日本最高被害額という事件です。
保険料は、一体いくらになるんだろう。想像もつかないですよね?
実は、この保険料は16,187円!!
ボーナスの運送1回について、保険が掛けられていたとはいえ、運送保険に加入し、この保険料で3億円(保険上は2億9430万8,000円)が支払われたのです。
超びっくりしませんか?

唯一とされるこの事件の保険証券のコピーは、首都圏から離れた場所に厳重に保管されています。

 この保険料になった経緯について当時の関係者はすでに退職され、確認することはできませんが、計算してみると、”従業員の給与・ボーナス”を強奪することはあるまい
という”性善説”に基づいての算出だったのかなと、個人的に思っています。

 こうした高額の補償(損害保険では補償と書きます)の場合、保険会社が再保険といって、別の保険会社に保険事故が発生した時のために保険を掛けます。
この場合も同様でした。
再保険会社から保険会社に保険金が支払われたことにより、日本国内では最終的にどこも実被害を被らなかったとして、被害額のごろ合わせで2億9430万円(ニクシミゼロ)と呼ばれたりします。

 しかし、実際は、この事件の翌年から運送保険などの再保険料は値上がりしたので、お客様への影響はゼロというわけではなかったのです。

特に損保業界にとっては、「何も起こらないことを祈りながら、想定できる潜在リスクの可能性を徹底させる」こととなっエポックメーキングともいうべき大事件でもあったのです。